CO2排出削減を目指した革新的な技術開発にチャレンジしていきます

野村 誠治

CO2排出削減を目指した革新的な技術開発にチャレンジしていきます

鉄は地球上に最も多く存在する元素で、建造物、鉄道、車、家電など、社会インフラや耐久消費財などを構成する優れた素材として私たちの生活を支えています。鉄は主に、石炭を蒸し焼きにした炭素の塊であるコークスを用いて「高炉」で鉄鉱石中の酸素を取り除いて(鉄鉱石を還元して)作りますが、その過程でCO2が発生します。ここで、コークスの役割の一部を水素に置き換える「水素還元」を行えば、発生するのはCO2ではなく水になります。COURSE50プロジェクトでは、この水素還元技術と、高炉から排出されるCO2の分離回収技術の組み合わせにより、高炉からのCO2排出削減を目指しています。

一方、炭素による還元反応をベースとした高炉法は、18世紀の産業革命前から約300年も続いてきたプロセスで、炭素を水素に置き換えるのは、容易なことではありません。そもそも水素還元は熱を奪う反応なので、水素還元がおこると温度が下がってしまい、鉄鉱石は溶けにくく、反応は進みにくくなってしまいます。プロジェクトではこれまで、反応メカニズムや原理原則を究明して巧みに反応をコントロールする技術を見出し、数学モデル(理論)と実験の組み合わせにより、試験高炉でCO2の10%削減にこぎつけることができました。

鉄は、強くて、多様な機能があり、リサイクル性に優れる素材です。スケールアップや、水素還元で奪われた熱を補う技術など、実用化に向けてはまだ大きな課題がありますが、われわれの生活に欠くことのできない鉄を今後も供給し続けるため、CO2排出削減を目指した革新的な技術開発にチャレンジしていきたいと思います。

日本製鉄 技術開発本部 フェロー野村 誠治

田中 秀明

イノベーションを通じたカーボンニュートラル実現に取り組みます

2020年10月に菅首相が所信表明演説で、日本は2050年までにカーボンニュートラルを目指すことを宣言されました。これを受け、同年12月には「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」が経済産業省を中心に策定されました。そこでは14の重点分野の一つである水素産業の成長戦略「工程表」の中に、製鉄分野における、環境調和型プロセス技術の開発/水素還元等プロセス技術の開発(COURSE50)と水素還元製鉄が位置付けられました。

高炉において鉄を製造するには、通常コークスを用いて鉄鉱石を還元します。COURSE50は、コークスの一部を水素で代替すること等により、高炉から発生するCO2を削減することを目的としています。この技術は、2007年5月に発表された地球温暖化に関するイニシアティブ「美しい星50(Cool Earth 50)」における革新的技術開発の一例として位置づけられ、2008年度からNEDOの委託事業として研究開発を実施しています。それぞれ5年間の要素技術開発および総合技術開発フェーズを経て、2018年度からは実用化開発を行っています。

また、水素還元製鉄は、石炭を利用しない水素還元による製鉄を中心とした革新的技術であり、2020年度からNEDOの委託事業として「ゼロカーボン・スチール」実現に向けた技術開発に着手しました。

2050年カーボンニュートラルは大変チャレンジングな目標で、その実現にはイノベーションが不可欠です。NEDOはイノベーションアクセラレーターとして、関係者の皆様のご協力を得つつ、COURSE50や水素還元製鉄など「ゼロカーボン・スチール」に向けた技術開発を推進してまいります。

国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構 環境部長田中 秀明

MEMBER

メンバー紹介

渡辺 隆志

COURSE50
副プロジェクトリーダー
JFEスチール

渡辺 隆志

宇治澤 優

COURSE50
プロジェクトリーダー補佐
日本製鉄

宇治澤 優

石渡 夏生

COURSE50
副プロジェクトリーダー補佐
JFEスチール

石渡 夏生

中野 薫

SG1
日本製鉄

中野 薫

菊池 直樹

SG3
神戸製鋼

菊池 直樹

松崎 洋市

SG4
日本製鉄

松崎 洋市

小水流 広行

SG5
日本製鉄

小水流 広行

上城 親司

SG6
日本製鉄

上城 親司

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